学長ご挨拶
学長が創立150周年への想いを
語ります。
一橋大学の歴史は、1875年から始まります。この150年間で、「グローバル」「地域」「大学」の3つの意味で優れたコミュニティを一橋大学は創造してきました。一橋大学の特長を説明する際、「卓越したコミュニティ」という言葉を私が使っているのもそのためです。コミュニティとしての魅力が、卓越した人材と研究を生み、社会に貢献して世界にひらかれた研究大学としての卓越性にもつながっています。
また、指定国立大学として一橋大学は「日本の社会科学の改革を牽引する大学を目指す」と発信し続けてきました。なかでも力を入れて目指しているのが、社会科学の側からアプローチする「文理共創・文理融合」です。たとえば地球環境は、従来は自然科学のテーマでした。しかし、経済成長や工業化が地球環境に影響を与えるメカニズムや機序を明らかにするためには、社会科学と自然科学が共創・融合すべき部分が多くあります。それを日本で先導していく役割が一橋大学に期待されていると考えています。
このような先導をしていく上で、人文社会科学の基盤をしっかりと維持しつつ、文理の共創・融合へウイングを広げていきたいと思っています。1951年から70年あまり、商・経済・法・社会の4学部で、日本の社会科学研究をリードしてきました。そこに2023年4月からソーシャル・データサイエンス学部を開設したのは、データを扱う学問を文理の共創・融合の軸にしようと考えたからです。
近年は、起業する在学生も増えています。東京大学や東京工業大学などの理工系の学生諸君と交流して一緒に起業する人が出てきてもおもしろいでしょう。コロナ禍によるオンラインシステムの普及で他大学との交流が容易になりました。そのため一橋大学の枠にこだわらず、起業に関わる学生を広く支援していきたいと考えています。
150周年を迎えるに当たり、多くの取り組みに私も参加して準備を進めています。その中で印象的なのが、“次の150年”についての議論が中心になっている点です。一橋大学は、未来への架け橋にならなければなりません。しかも私たちは「一橋」です。だから橋=Bridgeを使って「The Bridge to the Future」というメインテーマを掲げました。このテーマを軸に、「ひとつひとつ、社会を変える。」志をもった大学として、施策のすべてが「The Bridge to the Future」に結びついていくこと、そして未来志向で150周年を迎え、次の150年を見据えながら一橋大学がよりひらかれて、社会や学外の人たちとつながり、世界から多様な人々がつどう場として育っていくことを、私は期待しています。
一橋大学長 中野 聡